吟行

平成21年あけび全国大会吟行 「筑波研究学園都市」     (上村光 記)

風が爽やかな19日朝、吟行バスは8時45分予定どおりホテルを出発した。雲一つ
ない快晴に心が弾む。まさに絶好の吟行日和、またも大津留主幹の輝かしい「晴れ
男」伝説に新しい1頁が加わったのである。


 バスは首都高速から常磐道へと真っ直ぐに筑波研究学園都市を目指す。色づき初
めた窓外の景色を見ながら約1時間でインターヘ。広い学園大通りを見学先の国土
地理院へと進む。計圃段階からすでに半世紀近い学園都市は街路樹も豊かに枝をひ
ろげ、人口20万人を超えたという市街は落着いた佇まいを穏やかな秋の日差しの中
に見せていた。

 見学の「地図と測量の科学館」では職員の方が案内、説明をして下さる。先ずラ
ウンジフロアーの航空写真を特殊眼鏡を使って在体視、日本国中の高山や深い渓谷
を実感。庭に出て「日本列島球体模型」に上る。列島を足下に離島への距離や球体
の地球を改めて実感する。ここで号車ごとに記念撮影。展示室では面日特別講話で
伺った地図の話を思い出しつつ古代から現在までの様々な地図や測量器械など貴重
な展示について説明を聞く。

 科学館を出て駅前ビル19階の展望室から学園都市の秋の風景を堪能する。遠くに
は筑波嶺の峰より落つるみなの川恋ぞつもり て淵となりぬる(小倉百人一首)と
詠まれ、また擢歌や歌枕としても名高い筑波山がその秀麗なすがたを見せている。

 心地よく風の吹き抜けるペデストリアンデッキを通って昼食会場のホテルヘ。
 昼食では楽しみの乾杯は次の見学のため我慢、大津留主幹からご挨拶と次の全国
大会は大阪開催との発表があり、続いて河野先生から歓迎する旨お話があり食事と
なった。

 午後の見学は我が国が世界に誇る科学技術の粋とも呼ぶべき「宇宙センター」。
構内のHHロケットの巨大さに驚きつつ号車ごとに写真撮影。その後案内ガイドに
導かれて号車ごとにバスに移動しながら展示、施設などを見学する。過去に打ち
上げられた歴代ロケットの1/20模型、本物のロケットエンジン、重さが120キロに
も達するという宇宙服等々。中でも一番の感激は若田飛行士が宇宙で4ヶ月余を
過した「きぼう」船室内への人室だった。

 こうして見学は終了。帰路は幸い渋滞に合うこともなく予定通り17時に東京駅に
到着。別れを惜しみつつ解散となった。

全国大会

平成21年あけび全国大会                (古屋和利記)

 平成二十一年度のあけび全国大会は、会員百余名が集い十月十八日
十三時より東京学士会館において開催された。

大会次第
開会         (司会)細野 宜昭 吉森 康代
開会の挨拶                大津留 温
物故選者追悼 故林 邦雄先生       中曽根桂子
       故村上歳子先生       菅井 博子
特別講話(財)  日本地図センター理事長 野々村邦夫
大会詠・あけび賞選考経過並びに結果発表  大津留 温
大会詠講評(前半)            各 選 者
あけびホームベージ紹介          小笠原嗣朗
大会詠講評(後半)            各 選 者
入賞・入選者表彰             大津留 温
懇親会        (司会)森下  茂 田中 国子
開宴・乾杯                河野 光明
入賞・入選者代表挨拶、各歌会報告、余興
閉会挨拶・中締め             江里口淳一郎

 開会の挨拶               大津留 温
 皆さん、よくいらっしゃいました。この全国大会は会員同士の友情を
深めること、歌に対する勉強意欲を掻き立てることの二つを目的にして
います。この目的が達成されれば大会は成功したといえます。

 あけび創刊八十年の今年、記念合同歌集を出販しました。会員の歌を
もれなく載せることができ、皆さんの歌を拝見すると、その人柄、歩み
などがよく分かって楽しいものになりました。この編集作業に当たられ
た方々のご労苦に深謝いたします。

 また、大津留直君が歌集「仮橋」を出販され、皆さんに送らせていた
だきました。ドイツ留学や父母、奥様への感謝の気持ちが平明に詠まれ
ています。

 この一年間に林邦雄先生は、村上歳子先生とお二人の選者、また多く
の会員の方々が亡くなられました。ご冥福をお析り致したいと存じます。

 本日の特別講話「知事は語る」は地図、測量の大家、野々村先生にお
願いいたしました。先人の艱難など、明日の吟行の国土地理院と併せて
有益なお話が期待できます。

 この後、林先生を中曽根先生が、村上先生を菅井先生がそれぞれ追悼
されるご挨拶をされ、特別講話に入った。

 大会詠・あけび賞選考経過並びに結果発表   大津留 温
 大会詠は「道」という題で皆さんから一二八首の歌をお出しいただいた。
選考結果は別掲のようにそれぞれいい歌が揃いました。

 あけび賞、佳作、奨励賞、努力賞
あけび賞 春の平等院     浦畑 淳子
佳作   視界零       杉岡  浩
     吾妹かなしも    墨  林衞
     沃野        高橋 盛雄
奨励賞  ヘルダーリンに寄す 大津留 直
     師逝きましき    向 登志子
     多武峰談山神社   川合 文子
     当尾の里      廣岡 清実
努力賞  大河は海へ     上村  光
     沖縄諸島      稲葉 信枝
     僻より抜け出て   六辻喜美代
     秘境秘湯      江藤 信昭
が選考され、これらの歌並びに鑑賞はあけび誌十二月号から順次掲載します。

 大会詠
(入選第一席)
学童疎開のわが手やさしく振りほどき母去にましき夕づく道を 稲葉 信枝
手を「やさしく振りほどき」、そこが絶妙。すぐに一席と決めた歌。
 
(入選第二席)
ほろ酔ひて月の夜道をわが影と二人し帰る単身社宅      細野 宜昭
四句が効いている。単身「社宅」としたところに味がありリアルな表現がよい。
 
(入選第二席)
逆縁の柩をおくるふるさとの道を濡らして春の雨降る     上村  光
具象的。下句によって作者の怒りにも似た悲しみがしみじみと胸に迫る。
 
(入選第三席)
追分の道は二つに別れゆく笹りんどうの乱れ咲く中      田所 和代
詩情に富んだ情景に笹りんどうがびったりと添い、しっとりとした感じで詠った。

(入選第三席)
秋草の茂みにませる道祖神よせあふ肩に朝露光る       浦畑 淳子
懐かしい郷愁を誘う、微笑ましい歌。
 
(入選第三席)
山頂への道を閉ざせる残雪の上に影して白雲渡る       奈良平信子
読む程に気持が高揚するいい歌。結句の「渡る」が効いている。

 「あけびホームページ」の紹介
 紹介は、小笠原、小暮、柘植三氏により、実際のパソコンの圃面をプロジェ
クターに投影して、①あけびホームページの概要②何のために作っているの
か③なぜご紹介するのかの三点を分かりやすく説明された。(アドレスはあけ
び誌裏表紙にある。)

入賞、入選者の表彰、写真撮影、懇親会
懇親会は森下さん、田中国子さんの司会、開宴・乾杯を河野光明先生のご発
声で開始し入賞者を代表してあけび言受賞の浦畑淳子さんのご挨拶、その後、
各歌会ごとに近況報告、余興のご披露と続き、江里口淳一郎先生の中締めで
予定通り午後八時にお開きとなった。

白梅忌

平成21年白梅忌           (重信二郎記)

今年の白梅忌歌会は別掲のとおり、3月14日深大寺水神苑で行われた。参加者28名。

歌碑の裏面に刻まれた説明によると、昭和48年3月14日林先生の古希を記念してこの
歌碑を建てたとある。丁度36年以前のこと。
当時の事情を知る者は出席者の中では中曽根佳子さん唯一人であった。

先生のお墓は福井にあるためお参りするのも容易ではない。深大寺の歌碑の前に歌を
捧げることでお許しを得たい。

深大寺水神苑にて

心知る友と連れだち大寺に師を偲びつつ歌たてまつる       大津留 温

師と友と歩みめぐりしこのあたり梅が香ほのか身をつつみゐて   中曽根佳子

雨上がり鴬の声さえ渡る歌碑蔽ふ白梅けなげに残り                 重信 二郎

全山の揺るるあらしの一夜さを凛と残れる白梅の花         高橋 盛雄

今生の別れの握手賜ひたるぬくもり顕ち来師のみ歌碑前       田村 宗代

「元三大師前の三段上がり右手にね」み声にそひて今日もまみゆる 西岡 寛子

ごぶさたを詫びつつ真向かふ歌碑の辺に残んの白梅ほのかに香る  田中 国子

今年また集ふをえたり深大寺先師ゆかりの梅のちるころ       墨 林衛

天と地のあはひに香る白紅梅御歌碑の上に今日も咲きつぐ      菰田 道代

春雨の洗ひ清めし師の歌碑のくきやかなる字を眼にぞなぞれり   上野 猛雄

新年歌会

平成21年あけび東京新年歌会    (重信二郎記)

東京新年歌会が一月十一日、町村会館で行われた。出席者68名。
詠題「旅」、一首づつ各人が鑑賞した後、選者の講評を受ける。
互選の高点を得た作品は次のとおり。

 衰へし妻の記憶を覚ますべく旅の写真を見つつ語らふ        大津留 温

 母さんを大事にしてねと嫁ぐ娘はメールに託しぬ旅立ちの朝      細野 宜昭

  満州ゆ戦火の中を吾を連れ命の旅せし母今は亡き          奥山 裕司

  過ぎ来しの波乱も今は懐かしき旅路の果ても見え隠れして      遠山 仁一

  海近き温泉(いでゆ)の宿に小夜ふけて一人旅寝に潮騒を聴く        山田 英雄

  古里へ帰る旅路の連絡船月澄む瀬戸の島影やさし           矢田 久雄

全国大会

平成20年あけび全国大会                  (上村 光 記)

 平成二十年度のあけび全国大会は、十月五日十三時より浜松市の
アクトシティ浜松において開催された。大会次第は次のとおり。

開会           (司会)墨 林衛、 石川 華子
開会の挨拶            大津留 温
特別講話(私の感銘を受けた歌)    大津留 温
大会詠・あけび賞選考経過発表     大津留 温
大会詠講評                 各選者
入賞・入選者表彰
懇親会            (司会)森下 茂、 松井 丈子
歓迎の挨拶               松井 正樹
乾杯                 河野 光明
会食
人賞・人選者代表挨拶
各地区歌会報告及び余興
閉会の挨拶                     江里口淳一郎

開会の挨拶            大津留 温
 皆さんよくいらっしゃいました。本日はお天気もよく、よい大会がもてると
思います。今回はここ浜松で開くという新しい試みでしたが、松井さんご夫妻
をはじめ江南の皆さんのご努力で無事開会できて何より、江南の皆さんに心か
ら感謝しお礼を申し上げます。

 また本日は長年あけびの為にご尽力下さった笹川健次先生が先月17日お已く
なりになったことをご報告せねばなりません。まことに残念、皆さんと共に心
からご冥福をお析りしたいと思います。

 大会の目的は、会員相互の親睦が第一です。平素誌上でお名前は存じ上げて
いるがまだお会いしていない方、去年の大会で親しくなった方と今年も会うな
ど、お互いに親しくなることが第一です。

 第二は歌に対する意欲を新たにすることです。大会詠で皆さんの歌のすぐれ
ている点、また講評の要点を理解し、さらに作歌に対し意欲が湧いて来ること
が第二の目的です。

 以上の二つの目的が達成されれば今回の大会は成功であったと言えるでしょう。
それでは今日明日の両日が充実した一日であるよう析ってごあいさつとします。
 

特別講話「私の感銘を受けた歌」     講師 大津留 温
 大津留温主幹が感銘を受けた歌を掲げ、それぞれに対する思いを述べられた。
 内容は省略。
 

大会詠・あけび賞選考経過発表       大津留 温
あけび賞
 あけび賞は24篇の応募があった。今年の応募作はレペルが高く、点数も接近し
ていて、選ぶのに困った程で、人選作を例年より多くした。

 結果は資料にあるとおりで、あけび賞は、大津留直さんの「阿蘇 春から夏へ」
で、阿蘇の壮大な野焼きから若草が萌え立ち万緑になるまでを詠んだもの。25首
始めから終りまでどの歌も緊っていて緩みがない。選者の方の点数もぬきん出て
いた。昨年に引き続いての受賞である。お目出度う。

 佳作は浦畑淳子さんの「孫の結婚式」、孫の奈那さんの婚儀の様子から将来に
亘る幸福を析る祖母の気持ちが謳われている。

 同じく佳作の篠田政夫さんの「浅間山麓」は信州と上州の国ざかいにある浅間
山麓の小諸、軽井沢、碓氷峠と足で捉えた季節の移り変る風情をうたったもの。

同じ佳作の川合文子さんの「奥吉野」、吉野は歴史の宝庫、南朝のあとから西行、
芭蕉の足跡まで歌の素材にこと欠かない。

 奨励賞五篇、努力賞五篇それぞれ昧合いのある佳篇。以上の人賞作は、あけび
2月号以降、選者の講評を添えて逐次発表する。

あけび賞 阿蘇 春から夏へ     大津留 直
佳作   孫の結婚式         浦畑 淳子
     浅間山麓          篠田 政夫
     奥吉野         川合 文子
奨励賞           小林 一雄、 向 登志子、 上村 光、
                  松井 一恵、 松井 正樹
努力賞           橋本 孝子、 松浦 里美、 住藤 尚子、
                 古屋 和利、 田所 和代

大会詠「若」
 今回の詠題「若」は幅広い詠み方が出来るので作品も多様にわたり、秀作が多か
った。第一席の大津留直さんはあけび賞と併せて、人選お目出度う。平素の精進の
たまものと思う。本日各選者の方が分担して講評をして頂き、その要旨はあけび12
月号に掲載される。

入選第一席
 初子われ脳性麻岸と父母はいかに聴きけむうら若くして     大津留 直

入選第二席
 わが命国に捧ぐとしたためし若き学徒の悲しき決意(知覧にて) 森下  茂
 セピア色の写し絵の母若かりき吾の知らざるはにかむ笑顔    田中 国子

入選第三席
 加古川にキラリ若貼遡る桜花びら散りぼふ中を         菰田 道代
 CTの圃像見つむる若き医師一呼吸して向き直るわれに     細川 幸子
 田植せし足跡残る峡の田を風のかたちに揺るる若苗       臼田 篤子

佳作 田所和代 松井丈子 柘植恵介 野中智子 住藤尚子 小笠原嗣朗 
  大井朝子 土屋正子 奈良平信子 細野宜昭 小林一雄 安藤幸子 矢田久雄 
  高井秀和 向登志子 武内武子 原納久子 松井正樹 山尾津耶子 谷口妙子 
  川合文子 大竹百合子 梅津豊 吉村美早子 青木房枝 吉井泰

吟行

平成20年あけび全国大会吟行「浜名湖畔」   (江南あけび生 記)

 前日十月五日浜松駅のアクト・シティで開催された「あけび全国大会」が、
大津留会長の御講演でご教示された「まごころの大歌会」と言えるとすれば、
翌六日の吟行会は、いわば「サプライズ(驚き)」連発の催しであった。

 前日迄の天気予報が、朝曇・午後雨ということで、旧花万博跡地の「ガー
デン・パーク」を午前中に訪問することに、行程変更を前夜の大懇親会で発表
し了承されたのに、当日の朝になると午前小雨・午後晴ということになり、急
辿、行程を「再逆転」させ、「誰の御陰か」などと、サプライズ気分でバスに
乗車、湖北井伊谷の「龍潭寺」拝観から吟行がはじまった。おかげで、九州か
ら参加され、同寺拝観を一番期待されていた大津留直氏御夫妻も同伴していた
だけ、それに感激した住職が同行して説明して下さった。小堀遠州の作庭した
という観賞式池泉庭園の心宇池岩組など、放送解説などもあり、その洒落た美
しさで見る者を感動させた。

 早めに着いた舘山寺のホテル・エンパイアでは、バスごとに写真を撮った後、
さて昼食となってサプライズ。二部屋に席が分離されていたので、急辿、二
台の放送機を設置させ、大津留会長のお話を聞くはめになった。だが、楽しい
昼食や自慢の温泉、浜名湖の展望や望みの買物などで、気分は回復。

 「ガーデン・パーク」と名づけられた旧花万博跡地を、班ごとで散策する予
定であったが、時間がないと運河遊覧船にほとんどが分乗した。目的地で下船
する時、会長の眼鏡が運河に落ちてしまった。なんとその時、船長が運河に潜
って見つけてくれたのだ、感激的サプライズ。「モネの庭」の池には、心配さ
れた睡蓮の花が、絵のとおり色とりどりに咲き、池のほとりを回遊する我れら
歌人を楽しませてくれた。池畔の草花やその隣りの歌壇の花の名などを、選者
先生にご教授いただけたのも感激であった。

 帰途の「浜名大橋」もまたサプライズ。北側の湖の水面は、凪いで静かな漣
が見えるだけなのに、バスが進む南側は真白な高波が打ち寄せる遠州灘である。
その真中を裂くかのように、バスは「今切口」を通って、駅へと帰途を急いだ
のでした。

全国大会

平成19年あけび全国大会        (古屋 和利 記)

 平成19年度のあけび全国大会は、10月21日13時より
束京学士会館において開催された。大会次第は次のとおり。

 開会 (司会)        墨林衛、田所和代
 開会の挨拶          大津留 温
 特別講話   コスモス選者  小島ゆかり
 大会詠・あけび賞選考経過発表 大津留 温
 大会詠講評          各選者
 入賞・入選者表彰
 懇親会 (司会)細野宜昭、吉森康代

 開会の挨拶         大津留 温
 皆さんよくいらっしゃいました。一年ぶりで皆さんのお元気な
お顔を拝見でき、うれしく思います。
 日頃誌上ではお名前を存じ上げているがまだお目にかかってい
ない方、去年の大会以来の久しぶりの方、会員相互の友情を高め
ていただくことがこの会の目的の一つです。

 また今回出詠していただいた歌についてはもれなく選者の先生
方に講評していただきます。さらに、本日の特別講師の小島先生
のお話を伺って、作歌に対する情熱をますます高くしてお帰りに
なっていただく、これが第二の目的です。この二つの目的が達成
されれば今日の大会は大成功だった、と言えます。

 小島ゆかり先生はいま歌壇でもっともお忙しい方で、各講演会
などでご活躍されております。先生は「コスモス」の選者で、ご
存知のようにコスモスは宮柊一。先生のお始めになった結社です。
宮先生は北原白秋のお弟子さんで、我々「あけび」の花田先生が
正岡子規を終生の師と仰いだのとはやや系統が違う。

系統は違うけれど、いずれも万葉集に出発した、短歌を心から熱愛
するグループです。むしろ違った観点からのお話を伺うことは我々
にとって大いに勉強になります。

 あけびは兎角正岡子規一辺倒、井の中の蛙と言われる。教えをま
っしぐらに守っていくこともいいが、同時に他の立場からの詠い方
を学ぶことも必要だと思います。その意味で、今日は大変よい先生
から有益なお話を伺えると思います。

 先般、中村浩理先生がお亡くなりになりました。博多から太宰府
への吟行の際には熱のこもった説明をされていましたが、大変惜し
い方を亡くしました。皆様も体に気をつけていつまでも歌が詠える
ようお願いしたい。

 なお、今年正月の歌会始に私が召人としてお招きいただいた際に
はあけびの皆様からお祝いの言葉や歌を頂戴し、恐縮しております。
お礼を申し上げます。

大会詠及びあけび賞の選考経過・結果発表 大津留 温

 あけび賞
 今年のあけび賞は以下のとおりです。今年の応募作品は28本で
昨年の35本に比ベやや少ない。しかし、作品はいい出来でした。
あけび賞の大津留直さんの「ドイツ秋色」はドイツを再訪したとき
のもので、私は辛い点数をつけたが、他の先生方がいい点数を付け
てトップとなりました。佳作は普通、2編か3編ですが、吉井、
上村、篠田各氏の作品が同点だったので4編となりました。

 これらの作品は選者の先生方の鑑賞文を付けてあけび十一月号から
順次発表されます。

 あけび賞 ドイツ秋色    大津留 直
 佳作   高原に心癒され  松井 丈子
      妻よ       吉井  泰
      美ら海へ     上村 光
      古都折々     篠田 政夫
 奨励賞    古屋和利 高橋盛雄、杉岡 浩、田所和代
 努力賞    向 登志子、柘植恵介、松井正樹

  
大会詠「鳥」
 今回の「鳥」は具体的な鳥の名前でも可ということにしたので作り
易かったのか全般的によくまとまっていい歌が並びました。選者の先
生方による点数も接近している、僅かな点差に多くの作がひしめいて
いる有様。佳作と一般も差はほとんどない。

人選作はさすがによい作品で点が集まった。浦畑さんは昨年も受賞さ
れましたが、大変いい歌です。普通、気がつかないところを詠った、
豊富な歌心を感じる。
第二席の田所さんの作も青木さんのも「鳥」を特殊な捉え方で巧みに
詠み込んだものです。第三席の歌になると次の佳作の作品と1点か2
点の差になるが、それだけ優れている、以上です.

  入選 第一席
舞ひあがる鶴を織りなす白無垢に孫晴れの日の身を包みたり 浦畑淳子

  入選 第二席
山鳩の声のくぐもり間をおきて読経ながるる御堂の中に   田所和代

みひつぎへ納めし鳥類図鑑手に自在にあらむ君の探鳥    青木房枝

  入選 第三席
ほうほうと嗚く鳩の音に亡母顕ちぬ戦地の父を待ち詫びましし 松井正樹

翻るすべも覚えし子つばめの飛び交ふ夕べ川面はなやぐ    森本弘恵

高みより獲物をねらふオホタカのまなこの朱をレンズに見惚る 丹羽信夫

今後も、あけび歌会のホームページをご覧下さい。

吟行

平成19年あけび全国大会吟行      (上村 光  記)    

 絶好の吟行日和であった。平成19年10月22日朝9時、参加者
77名はホテル前に集合、バス2台に分乗して出発した。空は一点
の雲も置かずまさに快晴、主幹の「晴れ男」伝説を裏付けるような
天恵に皆喜びの声を上げた。

 通勤の流れを窓から眺めながら順調に都心を走り抜け、間も
なく最初の見学先湯島聖堂に到着。江戸時代儒学振興の聖地と
も云うベき聖堂は、明治以降には現在の東京大学や筑波大学、
文部科学省や東京国政博物館などの前身施設が置かれ我国近代
教育の発祥の地でもあった。丁度孔子を祀っている大成殿に於
いて「孔子祭復活百周年記念事業」が開催中で、江戸の学習に
関した貴重な文物が展示されていた。展示を見学し孔子及び
4聖人の像などを見た後、大成殿前にて記念撮影。

 その後、孔子ゆかりの楷樹、台湾より寄贈された巨大な孔子
立像を見ながら斯文会講堂へ集合。斯文会理事長石川忠久氏の
講話を拝聴する。講話終了後バスにて上野公園不忍池へと移動
し、弁天堂参道人り目にて降車。

 やわらかな秋の陽射しの中、三三五五連れ政って弁犬島へ。
池には蓮の大葉が水面を覆う様に茂り、水辺にたくさんの鴨や
鳩が餌を漁る。弁犬堂の周囲には「ふぐ供養塔」や「包丁塚」
などの碑が並び上野らしい。

 昼食会場は、池を渡った池畔の「東天紅」。江里口先生音頭
の乾杯で和気藹々と食事。汗ばんだ後のビールが喉に染みる。
宴の終りに来年の大会開催地について大津留先生よりお話が
あり、愛知の松井さんより応答があった。

 食事の後は再びバスヘ。寛永寺、旧因州池田屋敷表門、旧寛
永寺本坊表門などを車中から見学、公園口にて下車。グループ
になって徒歩にて散策。先ずは西郷隆盛像へ、今なお圧倒的な
人気を誇る「西郷どん」と一緒の写真を撮る人が多い。次いで
彰義隊戦死之墓ヘ維新の悲劇に思いを馳せ瞑目。そして天海僧
正毛髪塔、秋色桜の句碑、清水観音堂へ。観音堂では、一瞬の
静寂のなか思い思いに頭を垂れる。急な階段を降り歩くと俳聖
芭蕉が
    花の雲鐘は上野か浅草か
と詠み、今でも朝夕の時を告げるという「時の鐘」を鐘楼に仰ぐ。
お化け灯篭、東照宮と見て大噴水前にてバス号車ごとに記念撮影。

 予定どおり15時上野公園を出発、30分にて東京駅に到着、終日
快晴に恵まれた吟行は来年の再会を約して解散となった。
                      

新年歌会

平成20年あけび東京新年歌会     (重信 二郎  記)


平成20年1月14日、全国町村会館で開催。参加67名。
詠題「友」、互評のあと選者の講評があった。
互選の高点を得たものは次のとおり。

若き日の初恋叶ひて友嫁ぐ微笑(えみ)にかくれり六十路の皺の 金田一佐代子

歓喜あげ友とめぐりし石垣の海の変はらず青の澄みたり 田所 和代

吾が友の葉書に描くからす瓜その照り映ゆる朱の実三つ 菰田 道代

いまだしと歌会(あけび)に入るを尻込みの友に重なるかの頃のわれ 柘植 恵介

諍いもいち二度ならぬ旧友(とも)にして老いて優しくなるを寂しむ 福嶋 等※

人には人の分(ぶん)があるとふ友の言ためらふわれを決意せしめつ  大津留 温

友禅の振袖すがたにほやかに吾娘はほほ笑む二十歳の春を  墨 林衛

白梅忌

平成20年白梅忌               (重信 二郎 記)

平成20年3月15日、深大寺に林 光雄先生の歌碑を尋ねて白梅忌歌会を
開く。参加者は34名、京都から菅井博子外2名の方が参加。
昨夜来の雨も上がり上天気。  詠草のいくつかを記す。

白梅の清けく澄める大寺の歌碑のぬくもりこころにとどく 江里口淳一郎

水ぬるむ春とはなりて師の歌碑のあたりほのぼの陽炎のたつ 中曽根佳子

しらうめの散りぼう歌碑を巡りつつみ魂したしく会ひにけるかも 菅井博子

京に住む歌友(とも)も来まして白梅忌残んの花のいや咲き澄める 高橋盛雄

この淡き花めでましし大き師のみこころしのぶけふ白梅忌     墨 林衞

紅梅の梅を挿頭せる山門をくぐりてぞ入るみ寺清しき     上野猛雄

風に乗り大寺の梅匂ひ来よ家居の吾に師は顕ちまさむ(紙上参加) 杉岡 浩

剪定のすみしバラの枝鋭(と)きトゲを張りて新芽を護らむとする 大津留 温